当財団は、来年の動物愛護管理(以下動愛法)見直しにあたり、37条ノ二の愛護センター業務に「飼い主のいない猫の繁殖制限(センターでの不妊去勢手術)の実施」の加筆を要望しております。
その理由を以下にのべさせていただきます。
1: 動物は繁殖するのが基本
動愛法にいう共生には繁殖制限が必須であり、動物の繁殖を防ぐのは人間の義務です。
2: 全国で多発し社会問題化している多頭崩壊
不妊去勢手術ができない(しない)環境によって生まれる多頭崩壊は全国の自治体で、大きな課題となっているが、解決のためには、これまでの事後措置(譲渡会、殺処分等)から、予防措置の繫殖制限・不妊去勢手術に舵を切ることが不可欠です。
この対応にはまずは多頭不妊去勢手術の可否が絡んでいます。
現状では、費用負担はボランティアや助成金頼みとなっており、そのため多頭不妊去勢手術の徹底が困難となっており、問題の根本解決になかなかつながっていません。
例えば、新潟市動物愛護センターの「センターに収容される猫の半分以上が『多頭飼 育由来』(参考:新潟市動物愛護センター内、にゃんがたセンタークリニック)」と いう報告もあります。 同市はそういった問題意識から、動物愛護センター内に不妊去勢専門クリニックを立 ち上げ「 1.飼い猫の多頭崩壊またはその恐れがある場合、 2.飼い主のいない猫の多頭崩壊 またはその恐れがある場合、 3.生活困窮が認められる場合」の条件を満たす場合に容易に不妊去勢手術を受けさせられる体制を整えようとしています。
3: 政府の政策としてお願いしたいこと
はじめに述べたように、動物愛護管理法37条には、飼い主のいる犬猫の繁殖制限義務がある。それと同様に、管理を要する飼い主のいない猫への繁殖制限に関して、37条ノ二の愛護センター業務に「飼い主のいる猫の繁殖制限(センターでの不妊去勢手術)の実施」の明記をお願いしたい。
現状、愛護センターの予算費用は、建物の維持費、光熱費、人件費、苦情受付、収容動物のえさ代等のみに使われることが多く、たとえ優秀な獣医師が赴任しても、苦情対応や殺処分対応などに忙殺されて離職してしまうことも頻繁にあると耳にしています。
私どもの団体で、全国約100か所の動物愛護センターの職員の方にアンケートを行ったところ、半数に近い方が「センターで不妊去勢手術をできるようにすべき」との回答がありました。(添付資料1)
しかしながら、現状の動愛法に、管理を要する飼い主のいない猫の繁殖制限についての責任が明記されていないことから、地域によって格差が生じるとともに、動愛法の法意「共生・繁殖制限等」が十分に反映されていません。殺処分と対になる不妊去勢手術の必要性を認識してほしいです。
動愛法の37条ノ二の「愛護センター業務」に「飼い主のいない猫の繁殖制限の施策」が加筆されることによって、一律に全国津々浦々同じサービスを住民が受けられ動愛法の法意が行き渡るというものです。
動物行政の基幹拠点の愛護センターの立ち位置、予算、使い方も含め、不妊去勢手術の重要性は海外ではスタンダードで罰則すらある地域もありそれを官民で支えております。
日本の愛護センターがまず無料で安定的にその政策をできる要件を備えている一方、いままで実現されていないのは不思議で残念なことです。
譲渡会はあくまでも事後措置(対処法)であり根本解決にはならないので、予防措置である不妊去勢手術が合理的で優先されるべきです。これからは事後措置から予防措置の繫殖制限・不妊去勢手術に舵を切ることは時代の要請ともいえます。
【動物が繁殖をするのは罪でなく人間が繁殖を止められないのは罪ではないか?】
愛護センターが時代の要請に合う運営ができるような政策を切に望んでおります。